独特な作風が人気の漫画家・山本直樹さんの作品を実写化した「ファンシー」は、今までにない感覚で描かれる異色のラブロマンス映画です。
寂れた温泉街で郵便配達員の仕事をしている鷹巣は、詩人である青年にファンレターを届けに行くのが日課でしたが、毎日顔を合わせるうちにち親しくなっていきます。
ある日、詩人のファンである不思議な女性が現れたことにより、鷹巣は奇妙な三角関係に巻き込まれて行くのですが…。
主要人物三人の他、田口トモロヲさん、宇崎竜童さんなど個性的な脇役陣たちの共演にも注目です。
山本直樹さんの独特な世界観をリアルに表現した本作品を、どうぞお楽しみ下さい!
寂れた温泉街で郵便配達員として働いている鷹巣明(永瀬正敏さん)は、父の竜男(宇崎竜童さん)の跡を継いで夜は彫師の仕事をしています。
鷹巣は町外れの家に住む、”ペンギン”という詩人の青年(窪田正孝さん)に毎日のように手紙を届けています。
ペンギンは浮世離れした日常を送っており、体質的に太陽の光を浴びることが出来ず外界とは全く接触せずに家に引き籠っています。
鷹巣はそんな風変りなペンギンと毎日のように顔を合わせているうちに、いつの間にか親しくなっていくのでした。
鷹巣たちが暮らす温泉街には風変りな人々が淡々と生活していました。
鷹巣が勤める郵便局の局長(田口トモロヲさん)の裏の仕事は、風俗嬢を斡旋する射的屋です。
ヤクザの二代目組長・国広(長谷川朝晴さん)は「本当は跡を継ぎたくなかったのに」といつも愚痴ばかりこぼしています。
鷹巣に刺青を入れてもらいにやって来る裏社会の男・新田(深水元喜さん)、誰彼構わずお墓を売りつけるお寺の住職など、皆どこか満たされないものを感じながら仕方なく生きているようでした。
ある日、ペンギンの妄信的なファンである女性”月夜の星”(小西桜子さん)が「妻にしてください」と言って自宅まで押しかけてきて、強引にペンギンの家に住み着きます。
しかし、月夜の星は浮世離れしたペンギンの暮らしぶりに戸惑いを感じ、現実と理想とのギャップに苦しむのでした。
ペンギンは”性的不能”で、相手に好意を持っていても性行為に及ぶことが出来ずに悩んでいました。
そんな月夜の星に鷹巣は、ペンギンが抱える悩みを話してしまいます。
ある日ペンギンは出版社から懇親パーティーの招待状を受け取ります。
パーティーに参加したいという月夜の星のため、ペンギンは鷹巣にエスコートを依頼します。
パーティーでワインを飲み過ぎて泥酔してしまった月夜の星は、日ごろの鬱憤から鷹巣に絡みます。
そんな彼女に鷹巣は思わずキスをし、酔った彼女はそのまま鷹巣に身を委ねそのまま関係を持ってしまうのでした。
その頃、温泉街では敵対するヤクザの組長を狙撃し血生臭い事件が続発していました。
敵対するヤクザの組長を狙撃した新田は温泉街に隠れていたのですが、ヤクザの追っ手に殺害されてしまいました。
月夜の星は夢見る少女から艶めかしい大人の女性へと変貌を遂げ、鷹巣との情事を重ねます。
ある日、とうとう鷹巣と月夜の星の関係に気付いたペンギンは複雑な思いを抱きますが、意を決して厳しい太陽の光が照り付ける外界へ出ていくのでした…。
ずっと引き籠もっていたペンギンの中で一体何が起こったのでしょうか。
月夜の星さえ現れなければそれなりに平和に生きていくことが出来たはずなのに、彼女の出現により、自分自身と向き合わなければならなくなったペンギンの今後が気になります。
鷹巣と月夜の星の関係がどうなっていくのかも気になるところです。
「ファンシー」に出てくる登場人物は皆それぞれに、どうしようもない”宿命”のようなものを抱えていますが、その宿命とどう向き合っていくのかを淡々とした作風の中で真摯に向き合う姿が描かれており、静かな感動を覚えます。
決して派手な映画ではありませんが、心温まる不思議な魅力のある作品です。
