イントロダクション

──まずは、映画化にいたるまでのプロセスをお聞かせいただけますでしょうか?

西田 10年前に舞台用に作った「泥棒役者」という作品は自分の中でもずっと特別で、いつか映像化してみたいという思いがあったんです。そんな中、「2作目の映画を撮ってみませんか」というお話をいただいて。そこで、まずは舞台版の登場人物の誰を主人公にするか、というところからスタートしました。というのは、舞台版の泥棒は役名も出てきませんし、バックボーンも明らかにならないので、そのまま主人公に据えてもあまり起伏が期待できないわけです。であれば、絵本作家を主人公にするのもありかな、と。そうやって、舞台をどのように映像化するか再考していった結果、やはり泥棒を主人公にしよう、という結論にいたりました。さらにストーリーを肉づけしていくうちに、丸ちゃん(丸山隆平)で撮りたいなと考えるようになって。世間一般的には明るいイメージですが、どこか淋しげな表情もする彼であれば、泥棒が抱えているバックボーンのせつなさを見事に表現してくれるのではないか、また間近で見ていても彼のそういう部分を引き出せたらなと思っていたので、主役を演じてほしい旨お伝えして、受けていただいたというのがだいたいの経緯です。

──丸山さんは舞台版の「泥棒役者」を観劇されていたのでしょうか?

西田 公演当時、お互いにまだ知り会っていなかったこともあって(笑)、観ていないんです。丸ちゃんは(舞台版の)DVDを見ると言ってくれたんですけど、今回の映画はある種〝別モノ〟として考えているので、敢えて見ないでほしいという話をしました。

──ちなみに、丸山さん以外のキャスティングはどのように決めていったのでしょうか?

西田 市村(正親)さんは舞台をはじめ多々出演作を拝見していて、もっとお茶目な部分を世に出せないかなと思っていたんです。今回、絵本作家の前園の配役を考えたとき、パッと頭に浮かんできたので、その直感のままお願いしました。ここまで出演シーンの多い映画は初めてだとのことだったので、やりがいを感じていただいたのではないかと僕は勝手に思っているんですけど……現場ではずっと「ヘンな映画だねぇ!」と、おっしゃっていましたね(笑)。でも、そのヘンテコな部分を楽しんでくださったのはありがたかったです。市村さんの魅力を楽しんでもらえる映画になればいいなと。ユースケ(・サンタマリア)さんとは、かつて舞台もご一緒していますが、そのとき本当に面白い方だなぁという印象を受けまして、いい意味でテキトーで明るく、勢いでごまかしちゃう感じで轟という役を演じていただけたらと思い、依頼しました。「久しぶりだなぁ、こういう役は。最近ジッと何かを見つめるみたいな役で静かな芝居が多かったから、疲れるけどね」と言いつつ、ユースケさんならではの轟にしてくださったと感じています。(宮川)大輔さんとは「ガチ☆ボーイ」(08)の時にご一緒していて、素晴らしいお芝居をするのを知っていたんですけど、あらためてスゴい俳優さんだということを広めたかったんです。今回演じていただいた則男という役は、単にセリフや所作で脅しているだけだと、映画そのものがぬるく見えてしまいかねない、非常に重要な役割を担っていたんですけど、大輔さんには本当に殴りかかってきそうな得体の知れない恐さがありましてね。丸ちゃんも「明るく話していたのに、芝居で対峙して目に力が入った瞬間から、目を合わせたくなくなる」と話していました。そして、(奥江里子役の)石橋杏奈ちゃんですが、ドラマの「妖怪人間ベム」でご一緒した際に魅力的な女優さんであることは承知していましたし、もちろんコント番組での活躍も見て知っていました。その上で、年上の男性陣を前にしても凜とした強さを感じさせる奥という役がハマるんじゃないかと考えて、引き受けてもらったんです。現場では、毎回同じ芝居を何回もできるので、テイクを重ねて周りの俳優さんたちの芝居のニュアンスが変わりかけたとき、ピシッと軌道を戻してくれるんですね。そういう意味でも、映画のメリハリを作ってくれています。また、舞台版で泥棒役だった片桐(仁)さんには、今回は別の役で出てほしいというお話をしてありました。映画オリジナルのユーチューバーにしてクレーマーの役なんですけど、見方によっては感情移入できるように、という配役の意図があります。なお髪型ですが、モジャモジャは今回丸ちゃんに譲ってもらって、片桐さんにはストレートヘアになってもらいました(笑)。峯村リエさんは、最後の最後にちょっとだけ彼女が演じる編集長の本当の姿が見えるシーンがあるんですけど、そこまでは奥にとっての目の上のタンコブなので、厳しさと凛々しさ、最後に見せる表情のギャップを見せられる人を、という狙いの配役で、見事に表現してくださいました。高畑充希ちゃんの美沙は映画オリジナルの役ですけど、「とと姉ちゃん」でご一緒してすごいなと思っていたので、今回タイミング的に何かお願いできないかなと。実はそんなに出番は多くなくて、撮影も2日間だけでしたけど、さすがの存在感を残してくれました。

──では、丸山さんと撮影現場をともにして、あらためてどんな印象を持たれましたか?

西田 気づかいの人にしてムードメーカーなので、常に明るくキャストやスタッフと言葉を交わして、周りに気を配っていましたね。また、ちょうど演じるということ=芝居への欲求が高まっていたようで、とても楽しいという言葉をよく口にしていました。僕の現場に限ったことではないと思いますが、演出家を信じて飛び込んでくれるタイプの俳優さんで、どうすればこちらの要求を具現化できるのか一生懸命に考えて演じてくれていたので、いいコンビネーションで臨めたと思っています。

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